オリオン座のおやじブログ

おやじ目線で「マネジメント」を中心に考えます・・・

ジョブ型雇用について考える(3)(日立の事例1)

「ジョブ型雇用」の定義

前回の記事で、世の中では「ジョブ型」雇用が持てはやされていることを書きました。

      ジョブ型雇用について考える(2)(色々な疑問) - オリオン座のおやじブログ

最近では、数多くの大企業が「ジョブ型」の導入や切換えを図っているようです。その一例として、企業ホームページ(HP)でその取り組みを紹介している企業を例に取り上げてみたいと思います。

日本を代表する大企業である日立製作所では、2021年4月からジョブ型雇用を導入する方針を打ち出しています。その取り組み内容を、人材統括本部の髙本氏と一橋ビジネススクールの楠木教授との対談形式で紹介しています。

全4回のこの特集サイトでは、日立製作所(企業)がどのような目的や期待で「ジョブ型」を導入しようとしているのか?がよく解ります。

第1回の記事では、「ジョブ型雇用」の定義や導入目的が説明されています。記事にそって、要点を書き出してみました。

 

・従来の「人に仕事を割り当てる」雇用形態から、「仕事に人を割り当てる」ジョブ型雇用へ転換する。

・ビジネスのグローバル化に伴い、グローバルで統一した人事ルールや人事制度が必要となって来た。その集大成が「ジョブ型人財マネジメント」という雇用スタイル。

・従来の制度は「メンバーシップ型」で、"就" ではなく "就 であった。

・この制度は、日本の製造業で多く見られた雇用形態で、高度経済成長期に、「早く・安く・大量」に製品をつくれば良い時代には合っていた。

・社員に同じ仕事を繰り返してもらうことで生産性が上がり、同時に経験値を活かすことが出来たので、年功序列の賃金もそれなりに一理あった。

・今や変化の激しいVUCAの時代、経験がむしろ意識改革のバイアスとなり、成功体験に固執して意思決定のスピードが遅くなるなどの弊害がある。

・一番のネックは、中高年層の社員のペイ・フォー・パフォーマンスが割りに合わなくなること。恵まれた待遇に安住してラクしたいと思うのは人間の基本的なサガなので、その変化に向けた意識改革が必要。

・役割や職責の大きさに応じて椅子(ポスト)に値段をつける。グローバルグレーティング制度を導入し、賃金の下方硬直性がかなり除外されつつある。

・ポストに見合う成果が出せなくなると、そのポストから外れて頂き、ダウングレードになるケースも実際に出て来ている。(給与が下がる)

・年齢が問題ではなく、期待される成果と報酬が合わなくなることが問題であり、ここを放置すると会社の経営が傾く。

・次のステップとして、ポストに求められる役割をクリアにした上で、その役割を果たせる能力がある人に、年齢に関係なくその役割を担って頂く組織体制とすべく、グローバルでは当たり前のジョブ型雇用制度に移行を決めた。

・日本以外の組織では、そういった雇用契約を社員と結んできたので、日本だけローカライズするわけにもいかない。

・楠木先生の指摘通り、一人ひとりのジョブがあまり区別されてしまうと、曖昧な仕事を誰がやるのか?といった問題が発生してしまう。

・ジョブ型のアメリ労働市場では、社会にセーフティーネットが張られていて、ジョグが無くなったらポンとスピンアウト出来て、また新しい会社を探せるという雇用の流動性を当り前とする文化がある。

・日本では、整理解雇の4要件が法律で厳しく定められており、雇用のセーフティーネットは実は大半を企業が担っている。よって、「君は居場所が無くなったから、退職していただきます」とは簡単に言えない。

・こうした矛盾を抱えながら前に進もうとしているのが日立が進めようとしているジョブ型人財マネジメントの実態です。

 

皆さんは、この記事や要点を読んでどう感じるでしょうか?「まあ、そんなものかな?!」といった感想でしょうか?

私も最初に読んだ時(約1ヶ月前)は、そのように感じたのですが、この「ジョブ型」雇用の問題点やその構造が理解出来た今読むと、突っ込みどころ満載というのが感想です。

ここでは継続して、日立製作所の事例を通じて、最近の企業(経営層や人事部門)が何を考えているのか? 「ジョブ型」雇用に何を期待しているのか? その目的や期待する成果は何か? などを冷静に整理・分析してみたいと思います。