オリオン座のおやじブログ

おやじ目線で「マネジメント」を中心に考えます・・・

ジョブ型雇用について考える(6)(日立の事例4)

ウェルチの手紙

日立が企業HPで公開している日立の髙木氏と楠木教授の対談を通じ、「ジョブ型」雇用については考える第4回。

今回の対談のタイトルは「ウェルチからの手紙」となっています。

ウェルチとは、「20世紀最高の経営者」*1と呼ばれた、GEの元CEOのジャック・ウェルチ氏です。

4回の連載も今回が最終回になっており、内容も少々「ジョブ型」から離れている気もしますが、従来通り要点を整理してみましょう。(主に事業ドメインの話し…)

<髙木>

・日立では、従来MBO*2で社員を評価してきた。つまり、目標を達成できたか・できなかったかを重視していた。

・現在は、結果だけでなく、プロセス、パフォーマンス、コンピテンシーなども併せて評価する、グローバル・パフォーマンス・マネジメント制度(GPM)へ移行している。

<楠木>

・現場の社員を評価するのはそれで良いが、難しいのは会社の上層部。この層は、フォーマットもフレームワークもなく、GEのウェルチがやっていたような、一対一の会話が理想。管理者の評価手法としては、原点にして頂点ではないかと思う。

・組織には、システマチックに評価すべきレイヤー(層)と、ウェルチのやり方が良いレイヤーがある。経営人材の評価は、企業にとってとても重要なもの。

<髙木>
ウェルチは数多くの経営改革と共に部下の教育・育成にも非常に熱心で、非常に大きな成果をあげた。そのGEがここ数年、業績低迷しているのは?

<楠木>

ウェルチが本領発揮したのは経営人材の発掘だった。しかし、事業そのものが時流とずれてしまうと、どんなに経営者が優れていても難しい。

ウェルチの後任だったイメルトの時代に、さらに事業を絞り込むべきだった。

・どんな会社にも旬の時期や賞味期限がある。

・例えるなら、一生懸命に四股を踏んで強くなったお相撲さんに、「これからは、新体操でお願いします」と言うようなもの。

<髙木>

・戦う場所を間違えているということですね。つまり、経営人財も大事だが、ビジネス環境の変化に対応できるレジリエンス力(変化耐性力)を育む文化が必要で、HR部門の大きな役割。

<楠木>(対談の最後に、事前のシナリオ通りに?)
・日立も昔はGEのようにお相撲さんだった。今は異種競技、例えば野球をやれということになったら結構やっていけるのではないか。

・高度成長期を先導した伝統企業の代表格が「ジョブ型雇用」を採り入れることが、世の中に大きな良い影響を与えることを期待しています。

 

と、最後は綺麗に対談をまとめた感じです。

上記の通り、この第4回は「対談のまとめ」の位置づけで、「ジョブ型」については、あまり触れていません。しかし、ここでも気になる内容が出ています。それは「ビジネス環境の変化に対応できるレジリエンス力」の辺りです。

これで、日立の4回の対談記事の紹介が終わりました。

恐らく、「ジョブ型」の導入を検討・推進している他の多くの企業の目から見ても、この対談で語られた内容や、そこに出て来たキーワードは、どれも共通的なものなのではないでしょうか? つまり、多くの企業や経営者、そして人事部門の方々が、似たような認識や考え方で「ジョブ型」の導入や切替えを検討しているのだと思います。

一方で、この4回の連載対談の中で語られた内容に、私が感じて来た「違和感」が散りばめられているのも事実です。

次回から、その「違和感」について考えて行きたいと思います。

 

*1:1999年『フォーチュン』誌で「20世紀最高の経営者」に選ばれた。

*2:Management By Objective:個々の社員が自分で設定した目標の達成度によって評価する人事制度。