オリオン座のおやじブログ

おやじ目線で「マネジメント」を中心に考えます・・・

ジョブ型雇用について考える(7)(日立の事例を整理)

「ジョブ型」雇用について考える第7回です。
今まで、実際の事例として日立製作所のケースを4回に分けて紹介・確認して来ました。まずは、その要点を整理してみたいと思います。
髙本氏の発言から読み取れる日立製作所の考え方を箇条書きしてみました。

(要点と思われるところを青字にしました)

<ジョブ型導入の狙い・目的>

グローバルで統一した人事制度が必要。
(それが、ポスト(椅子)に値段をつけるジョブ型
・VUCAの時代(変化の激しい時代)は経験値が意識改革のバイアスになってしまう。
・成功体験に固執して意思決定が遅くなる弊害がある。
変化に柔軟に対応できるようにしたい

<真の狙い>

中高年ペイ・フォー・パフォーマンスが割りに合わない
・地位に安住して成果を上げていない中高年が多い
・役職者の椅子(ポスト)を減らすことが必要。
期待する成果と報酬が合っていないことが問題。
・ポストに見合う成果が出せなければ、ポストから外れてもらう。(ダウングレード

 <ジョブ・ディスクリプション(JD)>(楠木教授)

・本当に仕事に重要なことはJDでは記述出来ない。
・JDに記述していなくても重要な仕事はある。
・企業業績の差は、JDの差ではないはず。
重要な仕事はJDでは記述出来ない

<成果・評価>
人間力の評価が重要
人間力の評価は非常に難しい。(上司の評価力も問われる)
・JDが同じでも、人間力で成果に差が出る

 <人事部の役割・責任>

・空席が出来て、希望者が居ない場合は、人事部が業務命令で動かす。

<日本型雇用に対する認識や問題点>

・高度経済成長期は、同じ仕事を繰り返してもうことで良かった。
・経験値を生かせることが出来たので、年功序列賃金でも良かった。
・日本では雇用の4要件があり、簡単には解雇出来ない
(米国では、社会にセイフティーネットがあり、流動性が高い)

こうして整理してみると、日立の「ジョブ型」雇用に対する期待(建前)と、実際に直面している苦悩(本音)が良く分ります。

つまり、表向きの狙い(建前)
・事業の国際化でグローバルで統一した人事制度が必要になった。
・VUCAの時代で、変化に柔軟に対応する組織運営を行いたい。
しかし、本当の狙い(本音)
中高年の人件費を下げたい。(成果と報酬が合っていない)
ポストの数を減らしたい。
ということで、「ジョブ型」に変えて行きたい。
ところが、(楠木教授が "忖度" 無しに)
JDでは、重要な仕事の内容を記述出来ない。
という真髄を突いてしまいました。
それを受けて、髙本氏も本音が出て、
・本当に重要なのは人間力だと認めてしまっています。
また、人事部の在り方についても、従来通り
・人事部に大きな権限ある。
ことを前提としており、さらに
・日本には「整理解雇の四要件」があり、企業側の都合で容易に解雇することが出来ない。
という社会的(法律的)背景を前提にすることの重要性も認めています。

以上が、主に髙本氏の発言から読み取れる日立の認識や考え方だと思います。

この内容は、決して不自然でも不思議でもなく、恐らく多くの日本企業が似たような考え方や認識で「ジョブ型」に取り組んでいるものと考えられます。

しかし、少しでも「ジョブ型」について知識がある方であれば、この整理した内容が如何に可笑しなものであるかは、直ぐに感じ取れると思います。

次回はそれを具体的に考えてみたいと思います。

以上